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「里山の創造とまちづくり」 ――2003.2.15・さいたま市、ときわ会館で―― 発表者・中村、阿部 (1)安行地域「植木の里」として全国的に知られる川口市安行(あんぎょう)地区は、都心から20キロ、東京外環道=東京外郭環状道路と首都高速川口線が合流している川口ジャンクションの東側、市の東南部に位置します。地形的には、標高15〜20mの洪積台地「大宮台地」の最南端にあります。 見沼代用水と東の綾瀬川にはさまれ、台地や傾斜地、そして低湿地と、起伏に富んでいるのが特徴です。県の安行武南自然公園の指定を受け、台地の南側斜面には、雑木林が帯状に残っています。林の中では、ヤンマが飛び交い、キンポウゲ科のイチリンソウやコクサギ、シュンランなど貴重な野草が生息。中川の源流の一つともなっている清水が4か所で湧き出ており、サワガニやホタルのえさとなるカワニナも生息しています。 しかし、この地域も、外環道の開通や埼玉初の地下鉄の開業で、市街地開発の波が押し寄せ、宅地化も急ピッチで進行。地場産業の植木産業の斜陽化と、農地や樹林地の土地利用の転換が生じて住宅地のスプロール化も心配されている地域でもあります。 (2)協議会の発足 こうしたなか、私たちは、都心に最も近い「緑の回廊」としての貴重な自然を残そうと、7年ほど前から、地場産業を支えてきた赤土=関東ローム層と湧き水を生かして、緑豊かな雑木林を保全し、住民と動植物が一緒に生きる里山づくりを展開しています。 協議会の発足は、道のオアシス「道の駅」を整備するにあたり、川口市が呼びかけた安行地域の将来構想作りに、多くの住民が参加したのがきっかけでした。2年間にわたる検討の末、安行地域の将来イメージは「リフレッシュ・オアシス 植木の里 川口・あんぎょう」となりました。この構想づくりに参加した住民の間にまちづくりに対する関心が高まり、97年(平成9年)10月、協議会が正式に発足しました。 「議論より、現場に入って出来るところから手をつけよう」を合言葉にしています。会員は現在40人。植木産業従事者や会社員、寺の住職、元教員、元会社員など様々な職種の人が参加し、その夫人たちも加わっています。 (3)これまでの活動 私たちは、「赤堀用水沿い斜面林」と「興禅院」という隣接する二つの「ふるさとの森」を中心に活動しています。活動エリアは約3・5h、官有地2割、民有地8割の割合です。このため、土地所有者の理解を得ながら活動を展開、ごみ捨て場となっていた斜面林の大量のごみを撤去し、「木道の小径」や散策路を整備、荒れ放題だった林の間伐と下草刈りをして、広場を造成しました。 地域を訪れる市民のために、散策用の地図づくりに協力、案内看板や樹木の名札などを立てました。里道の脇にあった遊休地には、湧き水を活用して、様々な生物との共生空間=ビオトープの「トンボ池」を造成しました。 また、かつて飛び交ったホタルを呼び戻そうと、2年ほど前からはホタルの飼育にも乗り出し、会員が毎日、湧き水をタンクで約1.5キロ先の自宅に運び込み、庭に特設した水槽で飼育しています。えさとなるカワニナやタニシを育てるためせせらぎも整備しました。昨年夏には、会員が育てた平家ボタル約150匹が初めて夜空で光を放ちました。 今年はすでに、会員が提供した幼虫の飼育が、安行小学校の5年生の3クラスで行われており、夏には、子どもたちが育てた初めての平家ボタルが安行の夜空に舞う見通しです。 協議会では、動植物の調査や観察も定期的に実施しており、林の一角でイチリンソウの群落を見つけました。イチリンソウは埼玉県の絶滅危惧植物リストで「準絶滅危惧種」に指定されています。協議会では柵を設けて人が立ち入りできないように保護、開花期には観察調査や訪れる市民たちの道案内などをしています。2002年3月には、市の天然記念物に指定されました。毎年、開花期の4月には、市の内外から多くの鑑賞者が訪れ、昨年は、延べ1万5千人が見にきてくれました。 協議会では、街おこし活動にも積極的に協力。地域のふるさと祭りや、県の「ふるさとウォーク」、埼玉高速鉄道の「駅からウォーク」、川口市の青少年活動事業などにも会を挙げて協力しています。 また、PRを兼ねて、協議会のオリジナルのグッズ、木の枝や実で作ったペンダントやイチリンソウを染め抜いたTシャツを販売して、運営費を工面しています。 こうした活動の結果、斜面林にゴミを捨てる人がめっきり減り、荒れ放題だった雑木林が、市民の活用する公共的な空間として甦りつつあります。トンボ池の周りには、カモやコサギなど多くの野鳥が来るようになり、遊びに来る子供たちも増え、ザリガニやオタマジャクシなどを捕って楽しんでいます。 林の中に散歩道ができたことや、安行の話題がテレビや新聞などでも紹介されるようになったことから、住民たちは「自分の街」に誇りを持つようになり、地元ライオンズクラブなども支援してくれるようになりました。それがまた、会員の誇り、励みにもなっています。まちづくりを自ら考えようとする機運も、新たに生まれつつあります。協議会の活動の場が、地域の人たち、旧住民と移り住んできた新しい住民との交流の場ともなっています。 (4)これからの活動と課題 これからも、トンボ池や林の整備やイチリンソウを中心とした山野草の保護を図るとともに、春のイチリンソウ、秋のヒガンバナの咲く時期に合わせたウォーキング大会の開催、夏にはホタルの夕べの開催などの事業を進めていきますが、課題がないわけではありません。 会員の高齢化も進んでおり、新しい会員の確保、とりわけ、次代を担う若い人たちに協力を求めることも大切です。 安行を訪れた方が気分良く楽しめることができ、そしてまた来てもらえる仕組み作りとして地域案内人、いわば「グリーン・ガイド」ともいう案内人を養成したり、地域の小中学校に総合学習の場を提供し、次の世代へ私たちの遺産を上手に引き継ぎ、環境社会の持続を進めることも課題です。 新たな試みとして、夏休みなどに広場を活用して、身近な動植物の学習、ビオトープを考える「緑陰自然教室」や観察会の開催、幼児や児童に紙芝居や絵本を読み聞かせる「緑陰読みきかせの会」、中学校などのブラスバンドに協力を求めて緑陰で開くコンサートなども企画したいと考えています。「ふるさとを知る」学習の輪を、地区内の保育園や幼稚園、小中学校から、さらには、市内全域、埼玉県内へと拡大したいと考えます。 (5)終わりに まちづくり活動に終わりはありません。安行が面白く、元気で緑豊かな地域となり、それによって川口が魅力的なまちになるよう「まち作り」の魁(さきがけ)を心がけたいと思います。「ようこそ安行へ・・・ようこそ川口へ」をキャッチフレーズにこれからも頑張ります。 皆さんもぜひ、安行にいらしてください。植木産業を育ててきた赤土と、サワガニやカワニナがいる、まだまだきれいな湧き水、貴重な自然や環境をみんなで守り育てたいと思います。会員一同、お待ちしております。 ご清聴、ありがとうございました。 [ 関連写真 ] [ 地図 ] [ 流域図 ] [ みどり47号 ] |
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