甲府・実りの秋


美味なハナイグチ  秋の三連休を利用して、山梨・甲府の奥座敷、花崗岩の山を渓流が削り、奇岩、奇石で知られる御岳昇仙峡を訪れた。かつての勤務地。家族ぐるみでお付き合いをしている友人夫妻に誘われての2泊3日のドライブ旅行。紅葉狩りと称しながらも、実は、あわよくばマツタケにでも出合えれば、との旅。

 最近の天気予報はよく当たる。残念ながら午前7時に甲府市内の友人宅を出たときから小雨。埼玉・秩父に通じる国道140号線の途中、牧丘町室伏から琴川に沿って走る山道・クリスタルラインを走る。杣口から焼山峠に下りて乙女高原に抜ける。乙女高原はかつて県営スキー場があったところ。雑木を伐採し秋には芝刈りをしていたため、辺り一帯が草原となっている。初夏にはレンゲツツジが咲き誇る。紅葉にはまだやや早いが、黄葉はすでに始まっていた。

 乙女高原から甲府市に入り、奥御岳昇仙峡へ。秋雨に煙っている。途中で車を停め、カラマツ林に入る。林内に群生するハナイグチ=上写真=を採取。長野ではジゴボウと呼ばれる菌で、ナメコのようにぬめりがあるが、ナメコより美味。雨に濡れながら採取する。

マスタケ
 荒川の上流、精進川沿いに林道を登る。昼食の弁当は見晴らしのよいところで。がけの上に車を停める。

 友人が、がけ下を覗き込み、マスタケを見つけた。サルノコシカケの仲間でアイカワタケ属。約20メートル下の斜面に立つ針葉樹のツゲの古木の、直径50センチもある大木の地上から約5メートルほどの幹にへばりつくように生えていた=左写真=

 ほぼ半円形の傘が幾重にも重なり合って全体では20〜30センチの傘になっており、これが約1.5メートルほどの長さで生えている=下写真=。朱紅色をしており、渓流魚・マスの体色に似ていることから「マスタケ」と名づけられたという。若い時だけが食用になる。耳たぶほどのやわらかさが最適だが、生食には不向きという。

 露出した木の根を伝い、ツゲの木の根元に下りる。

マスタケ
 友人が長さ3メートルほどの枝を探してくる。先端は木の股を利用してカギ型になっている。この枝を使い、マスタケを落とす。ばらばらとマスタケが割れて落ちる。
 「サイコウ!」「すばらしい!」
 おどけたような声を上げて、ばらばらと落ちるマスタケを広い集める。独特の香りが鼻をつく。
 三分の二ほど、落としたところで、木の枝が届かなくなってしまった。
 「仕方ない。来年にとっておこう」。菌の温存を図った。収穫量は約3キロ。ビニール袋2袋にもなり、ずしりと重い。「マツタケはだめだったが、代わりにマスタケだ」

アケビ  木賊峠から瑞牆山(標高2230メートル)へ。瑞牆山は、深田久弥の名著『日本百名山』の一つにも選ばれており、北杜市(旧須玉町)のシンボルになっている。秩父連山の西端に位置する花崗岩山で、遠くからはノコギリのようなギザギザ頭の奇岩が切り立ち、奇峰の名がつけられている。

 山岳信仰の山、瑞牆山に通じる金山山荘前を過ぎ、「みずがき山自然公園」管理棟で休憩した。平成13年5月に開かれた「第52回全国植樹祭」の主会場の跡地約1.1ヘクタールを町が借り受け、昨年7月に管理棟を完成させた。森林教育と都市農山村の交流の拠点として農産物の直売などを行っている。

オオマムシグサ  帰りに、黒森でアケビを採取した=上写真=。地元の方は珍しくないようでほとんど手付かずの状態。白い粉をかぶったような薄紫色の実がいくつもぶら下がっている。つるを引っ張り、熟れて裂け目ができたアケビを集めた。近くでは、不気味な色の通称ヘビ草、サトイモ科のオオマムシグサの実を見つけた=右写真=

 塩川をせき止めた塩川ダム(通称・みずがき湖)の湖畔にある「ヨシャーの湯」で、汚れた登山靴やレインコートを洗う。含炭酸食塩泉で知られる湯治場・黒森鉱泉に近い。ヨシャーの湯は、鉱泉の湯を引き入れている。炭酸と塩分を含んでいるため、ややしょっぱく、口に含むとピリリと舌がしびれるほどだ。パン作りには向いているが、飲料としては不適だ。

 その夜、友人宅でさっそくキノコを味わった。甲州名物のほうとう鍋をつくる。みそ仕立ての鍋に、ハナイグチとマスタケの薄い部分を小さく刻んで入れる。塩、コショウで炒めたり、しょうゆで炒めた。いろいろ試したが、やや濃い味付けにした方が食べやすい。石づきに近い部分の肉厚は10ミリほどあるため、てんぷらにした。歯ごたえが鳥のささみに似ている。てんぷらを味塩で食べたのが一番美味だった。


   【甲府・昇仙峡一帯

(2005.10.12記)


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