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「入船うどん」 下 新潟港を行き来する船が目の前に見える「入船みなとタワー」のすぐ下で店を構える「入船うどん」。店の主人、宮内勝和さんは2年ほど前、有線放送最大手の会社を定年退職した。「残ってほしい」という上司の誘いを振り切って、「好きなヨットをやりたい」とかつて購入した新潟市海辺町のこの地で開業した。 「うどん打ちの技術はないが、幼いことから培ったこの舌がある」。讃岐うどんの本場、出身地の香川育ちという経験を生かして、手打ちうどんをはじめた。道具をそろえ、専門誌を読みふけり、粉やつゆの仕入先を見つけ出した。 手作りは、何も店の品だけではない。立派な店構えも手がけた。近くに住む知り合いの大工さんにお願いして、店の土台だけを頼んだ。床や壁、ドア、窓などの仕上げはすべて組み立てた。ネットオークションを活用して、解体で出た古い家屋の壁や板、ドアなどの材料を格安で手に入れる。大工道具をそろえた。幸いにも退職した身、時間は十分にあった。 セメントを流し床を張る。やや傾斜した床に載せたいすやテーブルもネットで手に入れた。店の内部を仔細に見ると、失敗したところも目立つ。 「丹念に探すと、もったいないほど良いものが格安で手に入ります」 うどん店では珍しいだろう。店先に、新潟港を見渡すことができるテラスをつくり、日光をさんさんと浴びながらうどんを食べられる。いわば、和洋折衷の店構えだ。若い人たちにも人気を呼びそうな店である。 そして、ユニークなのは「1人100円プラスうどん代。使用料はゼロ」というカラオケ商法。無料カラオケに定価に近いボトルのキープ、うどん以外持ち込みOKという商いに、グループで来る若者も多い。地元ジャズ愛好者の仲間たちが例会を開く。店の常連やファンも出来た。 宴会用に用意された和室の食卓や電灯、扇風機などレトロ調の家具類もほとんどネットオークションで手に入れた。奥の大部屋の壁際には、真空管を使用した大型のステレオが置かれていたが、これは、宮内さんが40年ほど前、学生だったころに購入したものだ。 左右のスピーカーから音があふれてくる。試しに、78回転のSP盤をかけた。ソプラノ歌手佐藤しのぶの歌唱は重厚で、部屋の空気を振るわせた。今のステレオからは体験できないような、鳥肌が立つほどの迫力があった。 庭先に、最近手に入れた古くなった給水車のタンクがゴロンと横たわっていた。 「在日米軍の掘り出し物。魔法瓶のような保温性があり、しかも堅牢。店で使う水道水を貯めて置きたくて」 入手の動機である。進化し続けるうどん店。暇な時間を見つけて、主人に話しかけてみるとよい。うどん屋の域を超えたうどん店である。 (終わり) ◇「入船うどん」店 【所在地】新潟市中央区海辺町一番町3788−2(電025-225−6085) (2006.7.24記、2007.10.27修正) Back | Front | Next Copyright The Hatogaya Com |