映画 de デート

 東京・有楽町駅前の映画劇場ピカデリーで約20年ぶりの映画でデートとなった。知り合いの写真仲間がこの秋、銀座で個展を開いた。その誘いを受けて妻と見に行ったものだが、打ち合わせが悪く、あいにく会場は休み。その結果として、映画を見ることになった。

 映画のデートは、日中国交回復10年を記念して1982年に制作された日中合作の社会派映画「未完の対局」以来だ。「未完の対局」は、のちに「男たちの大和」や「敦煌」などのメガフォンを握った佐藤純彌監督の作品。日中の名棋士同士の対局が官憲によって中断。日中戦争の激化の中、お互いの息子・娘の恋もひきさかれ、誤解と失意のうちに再会するというドラマ。戦争という不条理の中で引き裂かれていく個人。友情、愛をを描いたものだった。

 ピカデリー館ではいろいろな映画がかかっている。迷った挙句に二人で選んだのが松竹映画「出口のない海」だった。

 太平洋戦争の末期、二度と帰れないと知りながら、日本海軍最後の秘密兵器、人間魚雷「回天」に搭乗する海軍少尉の元甲子園優勝投手。その生き様を通して、生きることの意味を問いかけた映画だ。04年の映画賞を総なめにした「半落ち」の原作者、元地方紙記者の横山秀夫の原作を佐々部清監督が映画化した。脚本は、寅さん映画、「男はつらいよ」で知られるあの山田洋次監督だ。主演の少尉「並木浩二」役には映画初出演の歌舞伎俳優市川海老蔵が起用された。

 監督や出演者が舞台挨拶を終え、前日から一斉に全国ロードショーが始まったばかり、と知ったのは映画を見終わったあとだった。会場には、私たちと同じような団塊の世代やややお年寄りの方が多かった。

 戦争を描いても戦闘場面はなかった。戦いに疑問を抱きながらも「回天」に挺身する覚悟を固める極限の搭乗員。主人公・並木を取り巻く家族や大学時代の野球仲間、「回天」基地での戦友との日々のやりとりの中から、愛する家族やふるさとを思いながら回天に乗り込んでいく若い搭乗員とそれを支援する同僚。そして、死を覚悟し出撃しながら機械故障のために帰還せざるを得なくなった仲間の苦悶・・・。戦争にのめりこんでいく不条理をさわやかに描いている。

 出撃前の試運転で機械故障から海底に沈んだ「回天」。その狭い操縦席で必死に帰還しようとしながらも酸素欠乏のために静かな最期を迎える主人公。脳裏に浮かんだのは、出撃基地の空き地で楽しんだ後輩戦友とのキャッチボールと応援の大歓声の中で野球をする姿だった。「戦争は絶対に繰り返してはいけない」という佐々部監督のメッセージがしっかり伝わってくるラストシーンに、思わず目頭が熱くなった。会場のあちこちで、涙ぐむお年寄りや目頭をハンカチで押さえる女性もいた。
 さわやかで感動的な映画だった。  

(2006.11.7記)

■関連サイト■
 ●映画「出口のない海」オフィシャル・サイト
 ●映画「出口のない海」公式支援サイト

 
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